交通事故で子どもが被害者になってしまった場合

交通事故に遭ってしまったとき、通常であれば被害者本人が加害者に損害賠償の請求をするのが原則となっていますが、これには例外もあります。それは、被害者が子どもだった場合です。このケースでは、親権者が法定代理人として請求することになります。

では、実際に加害者とどのように交渉していけばよいのでしょうか。その事例を紹介します。

家族でドライブ中に…

家族3人でのドライブ中の交通事故事例で見ていきましょう。夫が運転していて、妻と6歳の子どもが同乗している状況で、対向車に正面衝突されました。夫と子どもが6か月の重傷を負って入院中です。対向車の運転手は飲酒運転をしていて、当方にはまったく過失はなく、先方が一方的に悪いのに、妻のほうからした損害賠償請求に対し、まったく誠意が見られず困っている状態です。

夫は入院中で交渉に当たれず、妻はどうしたらよいかわかりません。このような場合、どうやって解決するのがベストなのでしょうか。

代理人を弁護士に委任する

交通事故の被害者が子どもの場合、または重傷の場合には、当然、直接に加害者と損害の請求や、その他の交渉はできないことになります。一方、入院費用や治療費、あるいは生活費などは、そのような状況とは無関係に必要となります。

加害者に誠意があって積極的に解決に乗り出してきている場合であれば、損害の内金というような形式で仮払いをしてもらい、夫の回復を待って、夫に損害賠償請求の交渉をしてもらうこともできます。しかし、加害者が非協力的だと、被害者としては、はなはだ困った状態に置かれることになります。

そこで、当事者である被害者に代わって、この交渉をしてもらう人が必要になるわけです。いわゆる代理人を立てることになるのですが、代理人の資格については、法律上の規定はありません。もちろん、規定がないからといって、不法な示談屋や事件屋でもよいということにはなりません。

身内や友人に交通事故に関する法律的な知識があり、事務的な事項の処理能力が高い人がいればよいのですが、そのようなケースはほとんどないのが現状です。結局、法律上のあらゆる手段を考慮できる弁護士に委任して、加害者と折衝してもらうことが、もっとも安全で早道ということになります。

弁護士というのは、必ずしも訴訟だけを目的として選任する必要はないということです。

未成年者は代理人を委任できない

代理人を立てる場合は、何を委任するのかを表す委任事項を明確に決めて委任しないと、不測の損害を受けることがあるので注意が必要です。また、弁護士に交通事故の代理人を委任するときは、最初に着手金や報酬金について、はっきりとした取り決めをすることをおすすめします。

予算と見込みを立てて依頼すれば、頼まれる弁護士のほうも仕事がやりやすいものです。また、委任した弁護士を解任することは、いつでもできます。解任するときは、配達証明書付の内容証明郵便でその旨を通知しておけば、トラブルは起きないでしょう。

次に、今回のような被害者が子どもの場合、代理人を選任するのは誰かという問題があります。夫の損害賠償請求に関しては、夫が代理人に委任する人(委任者)になることは当然です。しかし、子どもについては、まだ6歳の幼児であり、当然、未成年者であるわけですから、代理人の選任や委任は本人にはできません。

この場合には、親権者である父と母が行うことになります。なぜなら、未成年者については、親権者が法定代理人になるからです。そして、親権者が父と母の2人いる場合には、共同で親権を行使することになります。

高速道路での交通事故

過失相殺という問題

次に子どもの「過失相殺」の事例を見ていきましょう。子どもは思わぬ危険な行動をすることがあり、そのため事故が発生するケースが少なくありません。その場合、子どもにも不注意があったとして、損害賠償の減額を要求される問題があります。

たとえば、5歳の幼稚園児が四つ角で、一時停止を怠った軽自動車と衝突し、転倒して頭部打撲の傷を負いました。運転者は、わずかな見舞金を持ってきただけで、飛び出してきた子どものほうが悪いと高姿勢です。この場合、子どもの過失は、どう見られるのでしょうか。

過失相殺の傾向

古くは、過失相殺されるには被害者にも責任能力が必要として、10歳5か月の子どもにはまだ責任能力がないため、その過失により賠償額を相殺することはできない、という判決がありました。

ところが、最高裁は昭和39年6月24日の大法廷判決で、それまでの考えを改め、責任能力まではいらないが、損害の発生を避けるために必要な注意力を意味する事理弁識能力があればよいとしました。

そのため、過失相殺をされる年齢が広げられ、8歳2か月の児童の過失が認められたことがありました。その後、交通安全教育が普及するにつれて、下級審では3歳の幼児の過失も考慮する判例が出ました。しかし、そこまで適用年齢を広げることに消極的な裁判所もあります。

ただし、幼児自身の過失を認めない場合、父母などの監督義務者に落ち度があるときは、これを被害者側の過失として賠償額を減らされた例はあります。事理弁識能力を基準にすると、過失相殺能力の年齢は下がってきますが、裁判所によってまちまちになる不合理な結果が生じることがあります。

そのため、近年は被害者の主観的な能力を問題とせずに、端的に、飛び出しや路上遊びなどの行動自体から客観的に判断して過失相殺の有無を決めようとする見方が広がりました。過失相殺というのは、被害者の軽率な行動を非難するためではなく、加害者の違法性も考慮し、損害賠償額を公平に調整するための制度だという考えが根底にあるのです。

事故の当事者がやるべきこと

交通事故が起きると気が動転してしまい、何をすればよか分からなくなりますが、冷静になり、事故現場で対応をする必要があります。事故当事者には、「負傷者の救援措置義務」「危険防止の措置」「警察への届出」という3つの責任があります。

警察管が現場にいない状況だったとしても、最寄りの警察署に事故が発生した日時と場所、負傷や損傷の程度、車両の積載物、講じた措置などを報告しなければなりません。警察への報告のためだけでなく、後日、相手と揉めるのを避けるためにも、携帯電話で事故現場を写真に残しておくとよいでしょう。